GRACE(優雅)
ヤフーオークション
 2009年、創業60周年を迎えられた「品川無線株式会社」は、その後も、フォノ・カートリッジ本体と交換針をユーザーに提供され続けました。しかし、2020年の頃から、それまで年に2回、頂いていた「グレース」の案内が届けられなくなったのです。新たに「グレース」のフォノ・カートリッジを購入することができなくなって、仕方なく私は、ヤフーオークションに出品されていないだろうか、と探してみました。すると「グレース」のフォノ・カートリッジは多数、出品されていて、とりわけ「F8」シリーズは沢山ありました。如何に「F8」が大ベストセラーであったかを実感したのです。
 ヤフーオークションで「グレース」のフォノ・カートリッジを見ていると、時折、「F8」以前のフォノ・カートリッジも出品されていました。私は、それまで「F8」以前のフォノ・カートリッジを持っていなくて、一度、聴いてみたいと思っていたので「F6」を落札しました。「F6」の音は、それまで聴いていた「F8」以降の音とだいぶ違っていて、骨太のたくましい音でした。「F6」の音が気に入った私は、それから見つけるたびに、「F5」「F6」「F’7」と落札し、最後に「F3」のモノラル・フォノ・カートリッジを落札し、現在、入手可能な「グレース」のフォノ・カートリッジを、ほぼコンプリートに揃えることが出来たのです。
銘機の系譜
 「グレース」のフォノ・カートリッジの型番は「F8」のように頭に「F」が付けられています。「ウィキペディア」の記事によると、「F1」「F2」から始まるようですが、いまだ見たことはありません。モノラル・フォノ・カートリッジの「F3」は、時々、ヤフーオークションに出品されていて、直近、入手いたしました。
 「F3」の次は「F45」で「グレース」最初のステレオ・フォノ・カートリッジだそうですが、これも見たことはありません。
 「F5」は素晴らしい。後年の「グレース」のフォノ・カートリッジとは、一味も二味も違う音です。デザインからしてゴツクテ、剛直な音が鳴りそうですが、ジャズのテナーサックスなんか、目の前で吹いているような迫力です。
 「F6」は、「F5」を少しスマートにしたようなデザインで、音も少し繊細さがあり、クラシックが良い雰囲気で鳴ってくれます。
 「F7」は、野心的というか、実験的というか、MM型の利点を最大限に活かそうとして、針圧が、「F7E」では、ナント、0.5g〜1.0gの超軽針圧なのです。「F7H」は、1.0gの針圧で空前絶後の解像力を発揮してくれます。
 「F8」は、言わずと知れた「グレース」のフォノ・カートリッジの代表作です。「奇跡の銘機」と言って過言ではないでしょう。大ベストセラーであったことは、ヤフーオークションでの出品点数からも自明です。
 「F9」は、私は「悲運の銘機」だと思っています。個人的には大好きなのですが、世上の評価は必ずしも高くはなかった。時代の流れが、MM型からMC型へ流されていったのです。大ヒットした「F8」の後継機種として、「品川無線株式会社」として社運をかけて開発に取り組み、MM型の利点である軽針圧を最大限に活かすべく、適正針圧を1.2gに設定し、かつ交換針の本体への挿入のガタを極力少なくした設計が、緻密な再生を可能にしているのですが。
 「F10」は、「グレース」が、あえて「MC型」で発表したフォノ・カートリッジです。期するところがあったのでしょう。「F10C」は永らく私の愛機でした。「MC型」ならではの緻密さと、「グレース」ならではの上品さを兼ね備えています。「グレース」にとっては「異端の銘機」でしょう。
 「ASAKURA’TWO」は、「グレース」として型番が「F」で始まらない初めてのフォノ・カーッとリッジでした。型番を「ASAKURA’TWO」としたことに朝倉昭さんの並々ならぬ思い入れがあったことは想像に難くありません。「中庸の銘機」と言って良い。中庸の美徳は朝倉昭さんのお人柄なのです。
 同じく「ASAKURA’ONE」と命名された「MC型」がありました。私にとって幻の「至高の銘機」でした。
 「LEVELU」も型番に「F」が使われていないフォノ・カートリッジです。「LEVELU」と、なぜ名付けられたのか、興味のあるところです。暖かな、豊かな響きの「円熟の銘機」です。
 「グレース」の「フォノ・カートリッジ」の有終の美を飾る「F14」。「究極の銘機」です。