神戸市中央区・兵庫区 

メリケンパーク  

 メリケンパークは「丸太や」から徒歩5分、弊店から最も近場の公園です。「丸太や」は私の生まれた時から今と同じ場所にあるのですが、公園に整備されたのはいつの頃なのか、昔はメリケン波止場という船着き場でした。子供心に、なんでメリケンなのかな、と思ったこともありました。メリケン粉のメリケン?それともアメリケンのメリケン?無精者の私は、いまだにメリケンという言葉の由来を調べようとしていないのですが。
 私がメリケンパークに足を運ぶようになったのは、メリケンパークの入り口近くにフィッシュダンスホールという建物があって、最初はライブコンサート会場だったようですが、その後、フィッシュダンス練習室という音楽練習室になって、時々、室内楽の録音会場に使用していたのです。
 散歩を始めて、店からメリケンパーク、ハーバーランドへ歩いて行くコースが気に入りました。みなと神戸ならではの景色が楽しめるのです。時折、海洋丸、日本丸の帆船が停泊していたり、飛鳥Uのような豪華クルーズ船が停泊していることもあるのです。



相楽園  

 相楽園は「丸太や」から北へ徒歩10分ほどの山の手にある元神戸市長小寺謙吉氏の先代泰次郎氏の邸宅跡です。神戸市内のど真ん中に在って、周囲の喧騒とは隔絶した閑静な庭園です。春は平戸つつじ、秋は紅葉が見事ですが、私は、6月から7月にかけて、園内の蘇鉄が若葉に萌える頃が大好きです。私の自宅の庭にも、蘇鉄が一本植わっているのですが、梅雨の中頃、幹の真ん中に新芽が噴き出して、日一日と膨れ上がって、梅雨明けと同時に若葉が萌え切ったのです。きっと蘇鉄は、梅雨の間に地中の水分を十二分に吸い込んで、梅雨が明けて、太陽が燦燦と照りだす、まさにその時に、太陽の光を一杯浴びるために、葉を全開したのだ、と思いました。蘇鉄は、生命力の象徴として振袖の柄に描かれることがあるのですが、その時、私は蘇鉄の生命力を実感したのです。
 相楽園には総ケヤキ造りの正門、欧風建築の旧小寺家厩舎(重要文化財)、保存のために移築された舟屋形(重要文化財)、旧ハッサム住宅(重要文化財)など貴重な建築物があるのですが、もう20年以上も前に、相楽園を管理されている神戸市公園緑化協会の依頼で、夏のイベントの一環で、普段は開放されていない旧ハッサム住宅の邸内でモーツァルトのフルート四重奏曲を演奏しました。演奏中に蚊に刺されたのがご愛敬でした。



ポーアイ北公園  

 神戸は海です、神戸は港です。私は東京で下宿していた大学在学中、神戸に帰省するたび、須磨駅で降りると、海岸に出て、砂浜を歩いて自宅に帰りました。潮の匂い、海の風を感じながら。だから海を、港を感じたくなると車をポートターミナルの駐車場に停めて、神戸大橋を渡って、ポーアイ北公園に行きます。
 ポーアイ北公園から神戸の街を見るのが好きです。真っ赤な神戸大橋、六甲の山並み、巨大なクレーン、ハーバーランドの観覧車、中突堤に停泊する日本丸、神戸市役所、メリケンパークオリエンタルホテル、ホテルオークラ、ポートターミナルには豪華客船。海と街と山。
 神戸は美しい街です。神戸が大好きです。神戸に生まれ育って、今も暮らし続けて、本当に良かった。しあわせです。



布引貯水池  

 小学校の遠足で布引の滝に行った記憶があるのですが、散歩を始めてあらためて布引の滝に行きました。山陽電車の月見山から板宿まで、地下鉄に乗り換えて新神戸まで、それから布引の滝まで歩きました。何十年ぶりで見た布引の滝は、記憶に残る以上に迫力がありました。丁度、散歩にもってこいのコースで、それから二度、三度、行きました。
 何年か前の12月頃だったか、神戸新聞に布引貯水池に鴛鴦(おしどり)が100羽以上、飛来しているという記事が写真入りで出ていました。その頃、散歩中に出会った野鳥を撮影することにハマっていたので、早速、行くことにしたのです。布引貯水池は、布引の滝の登山道を、さらに登っていった所にありました。
 見上げるようなダムの横手を登ってたどり着くと布引貯水池、神戸市民に安全で美味な飲料水を供給し続けてきた布引貯水池の水面は限りなく透明でした。その対岸の奥の茂みに隠れるように鴛鴦(おしどり)がいた、100羽を越えて。肉眼ではほとんど点のようにしか見えない。1000ミリの超望遠レンズで見ると、これが本当に鳥?本物の鳥?俄かには信じがたいほど綺麗だった。自然の創りだした造形美の傑作。鴛鴦(おしどり)は極めて神経質な鳥で、人間の傍には近づかないそうで、布引貯水池の対岸は遊歩道が無いので近づけないのです。布引貯水池でしか鴛鴦(おしどり)に出会えないのか、と諦めていたのですが、その後、奥須磨公園、烏原貯水池でも出会えたのですが、烏原貯水池では鴛鴦(おしどり)が飛んでいる姿を見ることが出来ました。まるで置物のような鳥なのに、本当に飛ぶのだ、飛べるのだ、と感動しました。



烏原貯水池  

 小学校の社会科の授業で、神戸港が天然の良港である理由を教わったのですが、その一つが神戸の水でした。長い航海の間、船倉に蓄えられた水を飲料水として使用するのに、神戸の水が最適だということだそうです。神戸市民に良質の水を提供し続けた水源が、烏原貯水池と布引貯水池です。烏原貯水池は、かつて神戸の娯楽の中心地であった新開地を真っ直ぐ北へ上がっていった山の麓(ふもと)にあります。
 烏原貯水池に行くのに、私は、神戸市内中心部の最も北を東西に走る山麓線沿いのコインパーキングに車を停めて歩いていくのですが、すぐに急こう配の坂道で、眼下に街並みを見下ろせるのです。しかし大袈裟ではなく、息も絶え絶えになって、やっと登りつめると、目の前に水を満々と湛(たた)えたダム湖が見渡せて、まるで別世界に来たようで、ここが神戸の街中なのか、と感動するのです。
 烏原貯水池は、周囲をグルっと回遊できる遊歩道があって、余り起伏の無い散歩には最適のコースなのですが、考えれば当たり前、貯水池自体が水平だからです。初めて歩いた時、大きな楓の木がたくさんあって、紅葉したらさぞかし綺麗だろうと思って、秋にもう一度来てみたら、圧巻でした。私の紅葉十選には間違いなく入ります。