奇跡 |
|---|
1995年1月17日の阪神淡路大震災勃発後、桜が咲いた被災地は春を過ぎた頃から少し落ち着きを取り戻して、復興への槌音が響き始めた夏、弊店でも少しずつ商売が復調し始めました。ウインドウに展示した訪問着を眼に留められた奥様とお嬢様が入店されお買い求め下さったのですが、娘さんがバイオリンケースをお持ちだったので「私はチェロで家内はビオラを弾くのです」とお話ししたら、「上の娘はバイオリンの勉強にフランスに留学していて、来年の春には神戸に帰ってきます」とお母さまが仰られて、住所と氏名を書いていただいたら自宅から車で15分ほどの所にお住まいでした。翌年の春、今度は親子三人で来店され、私は立花姉妹と私たち夫婦でカルテットをしませんかと申し上げたら受けてくださいました。 自宅での初練習、ハイドンの弦楽四重奏曲「鳥」を演奏したのですが、第一楽章の第二主題に移る瞬間、一瞬の間をおいて第二主題を弾き出した、その一瞬の間に、私は息をのみました。天才だ!こんなバイオリニストと一緒に演奏できるなんて奇跡だ!私は立花姉妹とのカルテットを「カルテット96」と命名したのは1996年の春に結成したからですが、隠された意味は、ハイドンの交響曲第96番「奇跡」に因んで付けました。「カルテット96」の練習は立花礼子さんのバイオリンから発せられるオーラに魅せられて私は全身全霊でチェロを弾きました。夜の10時ごろから始まる練習は、次第に、日をまたぐようになり、さらに立花姉妹をお宅までお送りする時には、朝日を拝むようになったのです。 震災後、「丸太や」店内で始めたコンサートは、最初、お客様が来られたら演奏するという随時公演だったのですが、第2回目に「カルテット96」が出演した日は、朝11時に満席になり、昼2時に満席になり、夕方4時に満席になり、まるで本格的なコンサートになったので、第3回目からは、11時、2時、4時の3回公演にしました。 |