信州

 小山憲市さんに聞かせていただいた復活の物語は感動でした。「全日本染織新人展」で大賞、文部大臣奨励賞、京都商工会議所会頭賞、を受賞された作品、「雪月華」、「光の雫」、「琥珀舞う」、を見せていただいて、さらに一層、感動しました。小山憲市さん、その人と作品に感動した私は、弊店での個展の開催をお願いいたしました。「折角のお申し出ですので、お受けしたいのですが、来年の秋までお待ちいただけないでしょうか。それまでに、がんばって作品づくりをいたしますので」、とおっしゃてくださいました。翌、一九九八年九月、「織りふたたび」と題して、小山憲市さんの、弊店、最初の織個展を開催していただくことになり、その直前の八月に、再び、小山憲市さんを訪ねて、上田に行きました。この時は、まず、小山憲市さんを訪ね、その後、清里に移動して、「清里マンドリン音楽祭」に参加しました。
 二度目の訪問では、直近の弊店での個展に向けて制作された作品を見せていただきました。どの作品も、これまでに見たことのない、清新な感覚に溢れていました。きっと、お客様に喜んでいただける、と確信しました。この時ほど、手応えを感じたことは、それ以前にも、それ以降にも、ありません。それほどに、素晴しい作品ばかりだった。私の予想していた通り、弊店で開催した、「織りふたたび 小山憲市織個展」は、沢山のお客様が来場され、お客様同士、「あなたは、この着物がお似合いですよ」、とお互いに、薦めあってくださって、和気藹々とした、和やかな雰囲気で、お買い物を楽しまれました。小山憲市さんは、「こんな風に、お客様のお目に留めていただけて、喜んでお求め下さって、こんなことは初めてです」、と驚いておられました。
 第一回目になる小山憲市さんの個展、「織りふたたび」が大好評で終わって、それから、二〇〇〇年の春には、音楽をモチーフに、「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の着物と帯を制作していただき、発表する、「織路成(オリジナル)」、二〇〇一年秋は、「祈りと回帰」、二〇〇三年春には、「出会い・再会」、2004年秋は、「通いあう心」、二〇〇六年春は、「信濃路の春」、二〇〇七年秋、「誠を尽くす」、とほぼ、一年半ごとに、七回、小山憲市さんの織個展を、開催していただいてまいりました。その間、毎年、夏には、「清里マンドリン音楽祭」への参加を兼ねて、信州上田を訪れ、小山憲市さんの工房をお訪ねしてきました。