成功

 息子が、タガメ探しに、夢中になっていることを知った、上月町のお客様のYさんが、ご近所の方に、「タガメを見つけてあげて」、とご本人も一緒に、タガメ探しをしてくださいました。そして、「タガメを見つけましたよ!」とお電話くださったのです。家族みんなで、飛んで行きました。夢のように追い続けた、タガメ!その、タガメが眼の前の、ガラス瓶の中に居る。持ち帰って、息子は、タガメを飼いました。タガメは、肉食です。生き物しか食べない。タガメが激減しているのは、餌になる生き物が減っているからです。家で飼うのに、タガメの餌は、「餌金(えさきん)」。餌にするための、金魚、なのです。「餌金」を、金魚屋さんで買って、タガメに食べさせるのです。可愛い金魚を。
 それから、しばらく経って、「また、タガメが見つかりました!」と上月町のYさんからのお電話。これで、最初のタガメとで、オスメス、つがいになりました。上手く行くと、交尾して、孵化するかも、と息子の夢は大きく膨らみました。ところが、一匹、死に、二匹目も、死に、はかなく、夢は破れました。翌年、上月町のYさんが、オス、メス、のタガメを、相次いで、見つけてくださったのです。今回は、とうとう、交尾した!無我夢中で、息子は観察しました。息子の持っている図鑑の説明どおり、寸分違わず、卵は孵化し、幼虫は脱皮を繰り返し、成虫になったのです。息子は、その一部始終を、観察し、絵に描きました。
 あの時、息子は、何を見ていたのだろう、何に気付いたのだろう。生命の神秘、自然の摂理。タガメを通して、タガメの奥に広がる、大きな大きな世界を、見たのだろう、気付いたのだろう。それは、一生の間に、一度しか訪れることない、出会いだったのでしょう。