第二十八話
 「モノ消費とコト消費」というコトバが、これからの商売の在り様を考える上でのキーワードだとして、じゃあ自分の店の商売ではどうなのでしょう。

時間と空間
 「モノ消費」という聞き慣れない言葉は、しかし誰が聞いても、ほぼ間違いなくイメージできます。しかし「コト消費」というコトバは、なんとなく分かったような、分からないような、即座に具体的なイメージが浮かんでこない。私なりに解釈すると「空間」と「時間」を楽しむことではないか。ある時、弊店のお客様が「お店で色々お買物をさせていただきましたが、その着物や帯を見ると、あの時、あそこの陳列台に飾られていた着物に目が留まって、思わず引き込まれて、お店の方に丁寧に説明して頂いて、買わせていただくことにした、その時の光景が、その着物を見る度に思い出されるのです」とおっしゃってくださいました。その時の光景、その「空間」と「時間」こそ、「コト消費」ではなかったか。
 なんとなく「コト消費」と言うと、イベントを連想しますが、確かに各種イベントは「モノ消費」ではなくて「コト消費」ではあるけれど、「モノ消費」に本質的に付随する「コト消費」があるはずです。それが一体何なのか。どういう形で提供できるものなのか、正直、私も手探り状態です。しかし最早「モノ消費」だけでお客様の心を動かせないとしたら、自店の商売で、どう「コト消費」が提供できるのかを熟慮する必要はあるでしょう。