第二十五話
 商店街は、「モノ」を売るところだった。「だった」と過去形で書いたのは、「モノ」を売るだけではない店舗が増えているからです。

オーナ−派・レンタル派・リサイクル派
 日本人が「所有価値」を何より大事にしていた時代、商店街の大半の店舗は物販でした。「所有価値」があたかも資産価値の如く理解(誤解)され、要不要に係らず「モノ」を買ってくださったからです。ところがバブル経済の崩壊、阪神淡路大震災の惨禍で、「所有価値」は資産価値たりえないことが露見して、一挙に「モノ」が売れなくなりました。人生において「所有価値」よりも「使用価値」が重要視されるようになったのです。
 「使用価値」が大事になると、何も「モノ」を持たなくてもいい、必要なとき借りればよい、という「レンタル派」が増えました。「モノ」そのものに資産価値がないなら、より安いリサイクル品でいい、という「リサイクル派」も増えました。商売は、需要があって供給が成り立つのですから、「モノ」そのものを有難がる「オーナー派」が減れば、その分、需要が減って供給も減らざるをえない。「オーナー派」を上得意にしていた商売が厳しくなったのは理の当然なのです。
 しかし「所有価値」から「使用価値」へ比重が移ったこと自体は大いに評価すべきです。なぜなら「使用価値」が生まれて、初めて「生産価値」が「価値実現」するからです。問題は「所有価値」から「使用価値」への「価値転換」に、私たち小売業者が対応できていないことにあります。もし的確に対応がなされれば、小売業に活況が戻ってくる可能性は十分ある。であるなら小売業者に課せられた課題は、小売業の置かれた現在の苦境は「所有価値」から「使用価値」への「価値転換」にあることを認識すること。従前の商売(成功体験)をいったん白紙にして、「価値転換」に対応した新たな商売を構想することです。時代の変化に対応した商売を創出することが何より肝要なのです。