第五十話
 世の中は捉えどころがありません。人もまた捉えどころがありません。一見、無秩序、無定形のように見えます。しかし混沌としているようで、実は法則が、原則がある。それを解く鍵(キーワード)があるのです。

価値実現
 私は「商鑑」を書くために商売について考え続けてきました。商売について考え続けて「商売とは何か」、「商売人は何をしなければないないか」が実にハッキリしました。「商売とは何か」を解く鍵(キーワード)は「価値」です。
 世の中は大雑把に言って生産者と流通者と消費者に分かれます。勿論一人の人間が生産者であり流通者であり消費者であることもありますが、生産者と流通者と消費者は果たす役割が異なります。
 生産者、流通者、消費者のそれぞれが果たす役割は、生産者は「生産価値」を創造する。流通者は「交換価値」を創造する。消費者は「所有価値」を保持した後、「使用価値」を創造する。生産者によって創造された「生産価値」は流通者によって「交換価値」に変換され、消費者の「所有価値」となった後「使用価値」として「価値実現」する。商売とは「生産価値」を「使用価値」に「価値実現」する要(かなめ)の役割を果たすのです。