第七話
暗転

 1995年1月17日。阪神淡路大震災、勃発。驚天動地の大災害。未曽有の被害。かろうじて自宅も店舗も倒壊はまぬがれましたが、直後、電気、水道、ガスが止まり、店の中は真っ暗で手の付けようもありませんでした。一週間後、電気が復旧し、散乱した店内を片付け始め、なんとか営業再開にこぎつけたのですが、被災後の惨状でとても呉服の販売など出来る状態ではありませんでした。一ヶ月前、満を持して発表した「丸太やオリジナルコレクション コンサート」が好評を博し、いよいよ「丸太や」の新しい時代が始まる、と期待に胸が膨らんだばかりなのに。
 これからどうする、どうやって商売を続ける。被災地神戸の店舗で販売をすることなど当分、到底できそうにありませんでした。私は「丸太オリジナルコレクション コンサート」が生まれた時、着物が好き音楽が好きな方なら、きっと喜んでくださる。神戸だけではなく、全国で「丸太オリジナルコレクション コンサート」の着物や帯を発表したい、と思いました。震災直後の神戸で、とても「丸太オリジナルコレクション コンサート」を紹介できる状況でないならば、全国で「丸太オリジナルコレクション コンサート」を発表しよう。しかし、どうやって。
 バブル経済崩壊の打撃をどうやって乗り越えるのかを暗中模索する中で、私は、店舗2階を「ギャラリー響」として活用することを始めました。人と人との出会いの場、心と心の触れ合う場をつくろうと考えたのです。出会いの中から、触れ合うことの中から、未来への道が見つかるかもしれない。であるなら「丸太オリジナルコレクション コンサート」を携えて全国各地のギャラリーへ出向こう。新たな出会いを求めて。
 震災後、東京を皮切りに、京都、名古屋、大阪、岡山、敦賀、松本、山、大垣、茅ケ崎、松、清里、長岡京と全国各地のギャラリーで「丸太オリジナルコレクション コンサート」の発表会を開催し、知人の演奏家に共演して頂いてコンサートも開催しました。各会場で「丸太オリジナルコレクション コンサート」は好評で、着物が好き音楽が好きな方に喜んでいただけるという自信を深めることが出来たのです。