テープレコーダー
録音
 私は子供の頃からスポーツ系で、小学校の時は少年野球、中学校、高校では卓球部で汗をかいていました。大学に入って卓球を続ける気はなかったので音楽同好会という音楽鑑賞クラブに入ったのですが面白くなくて、一層のこと交響楽団に入ろうと思い立って部室のドアを叩いたら、それまで楽器の経験がまったくないならチェロを弾きなさいと言われるが儘にチェロを始めました。数ヶ月経って、多少、ドレミファソラシドが弾けるようになった頃、同期のメンバーに誘われてカルテットを始めることになりました。生まれて初めてのカルテット、モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークの冒頭のト長調の和音が響いた瞬間の感動は一生忘れられません。
オープンテープレコーダー
 大学を出て家業の呉服屋になってからもオーケストラや室内楽でチェロを弾き続けたのですが、どんな演奏が出来ているのか確かめたくて録音をするようになりました。最初に購入したのは通称オープンデンスケと呼ばれていたソニーのTC5550−2という2トラックのポータブル録音機でした。当時、オーディオマニアの間では生録(なまろく)がブームで38回転2トラックの超重量級の超高級機が垂涎の録音機で、私もデノンのDH610Sを購入しました。確かに隔絶したハイクォリティーでテープヒスというノイズが皆無なことに感動しました。
デジタル録音機
 オープンテープレコーダーの音質は大満足だったのですが、如何せん重い。ソニーのTC5550―2は5キロ、デノンのDH610Sは28キロなので、そう簡単に持ち運べません。練習ぐらいだったら、とソニーのD5PROUというカセットテープレコーダーを購入しました。その頃、録音機にもDATというデジタル録音機が登場し、高音質が謳われていて、ポータブルタイプは丁度カセットテープレコーダと同じ大きさだったので使用してみましたが、やはり気に入らない。DATも幾つか使ってみたのですが、やっぱり駄目だ、とダメだししました。結局、今もアナログのテープレコーダーだけを使い続けています。
修理
 今、私が常用しているオーディオ機器で、実は一番古いのがソニーのTC5550−2で、その次に古いのがデノンのDH610Sなのです。かれこれ50年近くになる。しかしどちらも、ある時期、故障して使えなくなっていました。今どき、オープンテープレコーダーの修理など受けてもらえないのです。インターネトが普及して、オープンテープレコーダー修理で検索したら京都の川島オーディオサービスが修理していただけることが判りました。そして見事に復活して、今も快調に作動してくれるのです。
絶滅
 もうオープンテープレコーダーは絶滅しました。肝心のオープンテープが世界中で生産終了になってしまったからです。すでに30年以上前から国内の生産は終了して近隣のオーディオショップで購入できなくなり、雑誌の広告で東京のパラダイスコードがオープンテープを取り扱っていると知って、しばらくの間、購入できたのですが、そこでも販売終了となり、インターネットでオープンテープで検索したら千葉のサウンドハイツが販売していることを知りました。それから随分長い間お世話になりました。しかしサウンドハイツも数年前に販売終了になってしまいました。もう二度と、オープンテープも、オープンテープレコーダーも新品は購入できないのです。それでも私は、これまで録音していたテープを今も再生して聴くことは出来るのです。私にとって他の何ものにも代え難い貴重な録音、楽興の時が甦るのです。