レコードプレーヤー
オーディオコンポーネント
 私の最初のレコードプレーヤーは高校の入学祝に母が買ってくれたナショナルの「宴」というステレオ電蓄でした。ステレオ電蓄でレコードを聴くようになり、もっと良い音で聴きたくなってオーディオに興味を持つようになり、オーディオ雑誌を見るようになって、ラックスのSQ505というプリメインアンプと、SME3009というトーンアームをいつか使ってみたいと憧れたのです。早稲田大学に入学し、入学祝に家族や親類から頂いた祝金で秋葉原のオーディオショップで最初のオーディオコンポーネントを購入したのですが、アンプにラックスSQ505、トーンアームにSME3009を組むと、ほぼ予算が無くなって、お店の店員さんがオマケに下さったヘッドホーンで聴き始めました。ようやく1年後にダイナコA25というスピーカーを購入し、やっとスピーカーで音が聴けるようになりました。
調整
 その頃、早稲田大学交響楽団でチェロを弾いていたのですが、とある練習の後、みんなで食事に行った折、トレーナーの福富俊一さんが「三木さん、SMEのアームを使ってるの。ちゃんとラテラルバランスを合わせてる?」と聞かれたのです。SMEはイギリスのメーカーで使用説明書が英語なので針圧だけを合わせていたのですが、下宿に戻ってすぐに英和辞典と首っ引きで読んでみました。すると、針圧の調整はもちろん、アームの垂直、水平、オーバーハングを合わさないといけない。そして件(くだん)のラテラルバランスも。早速、使用説明書通り各調整をやってみたのですが、可能な限りキッチリと調整すればするほど、音がビックリするぐらい良くなったのです。私のオーディオ開眼でした。
フォノカートリッジ
 その時使っていたフォノカートリッジはグレースのF8Cでした。こんなに素晴らしい音で鳴るのだ、と驚きましたが、他のメーカーのフォノカートリッジならどんな音で鳴るのだろう、と欲が出て、当時評判だったシュアーのV15TYPEVを購入して聴き比べてみたのですが、それぞれに個性が違って、複数のフォノカートリッジを使い分けるという禁断の木の実を食べてしまったのです。その後、初めてMC型のFR1MK3を使ってみたらMM型と全然違う音世界に驚かされました
コンパクトディスク
 1980年頃、コンパクトディスクが出現し、アナログレコードとは隔絶した再生能力を持つ、と賑々(にぎにぎ)しく喧伝されました。私も良い音で聴きたいという願望がありましたから、そんなに良い音がするなら、とCDプレーヤーとCDを購入して聴いてみたのですが、良い音だといえば良い音なのでしょうが、なぜか心に響かない、心の中に入ってこない。レコードを聴くと、やっぱり心の中で響くのです。まだ誕生したばかりだから、と思わなくはなかったので、その後、何機種かCDプレーヤーを再購入しました。しかし、やっぱり駄目だ、と結論を出しました。
魅力
 アナログレコードの尽きない魅力は何なんだろう。機種、調整、使いこなしでどんどん音が良くなる。初めてオーディオコンポーネントを組んでから半世紀を超えてレコードを聴き続けてきましたが、今だに進化している。まだまだ進化し続ける。あー、良い音で鳴ってくれるようになった、そう思える時ほど愉しいことはない、嬉しいことはない。アナログレコード再生の醍醐味なのです。