円安
 10年程前、円相場が1ドル80円台で推移していた頃、メディア上では、連日のように円高で企業が苦境に陥っている、円高不況だ、と声高に論じられていました。しかし私は、次第に、円高イコール不況と報じられることに違和感を持つようになりました。確かに輸出企業にとって、円高は厳しい局面でしょう。しかし輸入企業にとっては、逆に望ましい状況ではないか、と思えたのです。
 私が物心ついた頃、1ドルは360円でした。固定相場だったのが、日本が戦後復興で経済成長を遂げるに従って変動相場に移行し、1ドルが150円になった頃、気軽に海外旅行が出来るようになった、と喜ぶ方が大勢いらっしゃいました。私にとって円が高くなっていくことは、日本の国力が増進していくことに他ならなかったのです。
 ところが、いつの頃からか、円高不況だ、円高不況だと騒がれるようになり、円高が諸悪の根源のように言われるようになりました。そして10年ほど前、政府が新たな経済政策を断行すると、次第に円は安くなっていったのです。同時並行で株は高くなっていきました。とりわけ、ここ数年の間に一挙に円安が進んで、円は1ドル150円を超えるまでになったのです。
 私は、毎日、店の帰りに家内とコープに買い物に行くのですが、ここ数年、食品がドンドン値上がりするのです。当たり前です。今、私たち日本人が買い物する食材は、その多くが輸入品なのです。日本の食料自給率は、現在ほぼ40パーセントで他国と比較して著しく低いのです。輸入食材が多いので円安は食料品の値上げに直結するのです。