危機の時代 |
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危機意識 |
私が、「時代の諸相」という論考を書こうと思い立ったのは、なぜ日本はバブル経済崩壊後の停滞を脱却できないのかを考え続けてきたからです。私は、停滞の原因は、何より危機意識の欠如にあると思うのです。日本社会があらゆる面で停滞していることは様々な指標で明らかになっているにもかかわらず、なぜ危機意識が希薄であったのか、それは意図的に情報が操作されてきたからではないか。過日、私は、韓国の最低賃金が、ここ11年の間に倍増したというニュースを見てショックを受けました。他方、日本は、この11年間の最低賃金の伸びは40パーセント増なのです。 国際NGO「国境なき記者団」が発表する「報道の自由度ランキング」で日本は、2010年には12位だったのが、僅か6年の間に72位まで落ちて、その後も横ばい状態で、本年、2024年は70位、先進7か国(G7)中、最下位なのです。2011年から2024年の間に、一体、何が起きたのか。なぜそれほどに報道の自由度が低下したのでしょう。 |
経済政策 |
2013年に始まった政府の経済政策は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を掲げて始められました。その後、10年が経ち、現在、株価はバブル経済崩壊前の最高値を更新し、円安が進んで、円の価値は半減しました。企業収益が上がり、内部留保が倍になりました。しかし、実質賃金は、この2年間、下がり続け物価高になりました。時の政府が打ち出した経済政策は、立場によって評価は分かれるところでしょうが、功罪相半ばではなかったでしょうか。 しかし当然ながら、経済政策を主導した政府は、その成果を誇示し、負の側面は伏せられました。意図的に隠蔽されてきたとすら思われるのです。当該の経済政策が実施されて以来、「報道の自由度ランキング」が先進7か国(G7)中、最下位に落ちたことは無関係ではないでしょう。経済政策は成功したと喧伝され続けたことが、経済の実態を国民に気付かせなかった。日本人が「停滞の時代」を今だに脱却できないことに、危機意識を持たなかった理由です。 |
改革 |
新聞紙上、インターネット上で、ときおり散見される社会生活の指標、数値は、バブル経済崩壊後、日本社会が如何に停滞し、他国に後れを取り、置いてきぼりにされてしまったかを如実に示しています。私たちは、何より先ず、その事実に向き合わねばなりません。しかし大多数の国民は、薄々、日本の凋落に気付いているのです、日々の生活実感から。だから、もう一度、日本を元気にしなければ、と思っているのです。そのためには、日本を変えなければ、と考えているのです。 バブル経済崩壊後、改革を掲げる政治家が輩出し、「ぶっ壊す」とか「身を切る」とか、まさしく一刀両断の言辞が喝采される風潮がありました。私は兵庫県民なのですが、先の県知事選挙で、地方紙の新聞社が、「継承」か「刷新」か、という二者択一で候補者の選択を促すという記事を掲載しましたが、私は、何を「継承」し、何を「刷新」するのか、を問うべきだと思いました。 |
復活 |
日本が、再び、「日、出(いず)る国」に復活するために、私たちは、今、何をなさねばならないのでしょう。私は、国民みんなが、与えられた持ち場を、地道にコツコツやるしかない、と考えます。現下の日本の状況は危機的です、ピンチなのです。だからこそ、みんなが、一生懸命、真剣に考えて、取り組まなければならないのです。 私は、街の小さな呉服屋を五十年来、営んできました。その間、バブル経済崩壊、阪神淡路大震災、金融不安、リーマンショック、コロナ禍、と次から次に、困難が押し寄せてきました。しかし、その都度、一生懸命、真剣に考えて、商売に取り組んで難局を乗り越えてきました。今、思い返すと、ピンチの時こそ気が付くことがある、学ぶことがある、始められることがある。今の私は、私の商売は、ピンチの時に鍛えられた。ピンチはチャンスなのです。今、日本がピンチであることこそ、チャンスなのです、日本復活の。 |