格差の時代
株価
 私は、今から40年前、34歳の時に「株式会社 丸太や」を経営する立場になりました。文学部の出身で、商学部でも経済学部でも経営学部でもなく、そういう勉強は全くしていなかったので、店の経営は、見よう見まねでした。唯、株価の値動きだけは見ていました。私自身が株の売買をやっていたわけではないのですが、実感として、「株が上がると景気が良くなる。株が下がると景気が悪くなる」と感じていたからです。ですからバブル経済崩壊後、最高値から一転して2万円を割り込んで、全く上がる気配がない間、商売もあがったりでした。
 ところが10年程前、新政権が新たな経済政策を打ち出すと、株価が一気に上昇に転じたのです。円は一気に下降したのですが。ところが、私のかつての経験知に反して、株はドンドン上がるのに、売り上げは一進一退どころか、落ち込んでいったのです。弊店のお客様の客層は、極く普通に平均的なのですが、聞くところによると百貨店では、富裕層の最上客が宝飾品や高級時計やブランド品を購入して好調だとの話でした。私は店への行き帰りは車なのですが、ここに来て、やたら国内外の高級車が走っている、コインパーキングでは入庫できないぐらいの大型車とか。店の近くは旧居留地のブランド街なのですが客で溢れかえっている。格差が拡大している、かつて無い程に。目に見えるぐらい。
実質賃金
 今、この小論を書いているのは2024年7月なのですが、先日の新聞の記事によると、実質賃金が26ヶ月対前年割れで、過去最長を記録したとのことでした。要するに、日本人の大半は、ドンドン所得が減っているのです。ドンドンお金が無くなっているのです。ところが個人保有の金融資産は、過去最高を記録したそうです。金を持つものが更に金を増やし、金を持たないものは更に金を失う。格差がドンドン拡大するのは当たり前なのです。
 格差拡大によって社会全体に不公平感が漂っています。不平不満が鬱屈して、ある日突然暴発する。今、日本の社会で、かつてない凶悪事件が多発していますが、不幸な人が激増して、さらに不幸な人を増やす、という不幸の連鎖が日本の社会に蔓延しているのです。不幸の連鎖を断ち切り、幸福の拡散が広がる社会に変えていくことが今こそ必要なのです。
ハラスメント
 格差の拡大によって惹き起こされる社会状況は、階層の分化によっての更に深刻になっています。かつて一億総中流と言われた日本社会が、今や中間層から貧困層への増大によって二極化されているのです。階層の分化は日本社会を更に強固なタテ社会に変質させ、全ての人間関係を上下関係に固定化していくことによって、強制と隷属の関係に変えて行ったのです。
 至る所でハラスメントが横行している。要するに、弱いものイジメ。格差社会の不平不満の憂さ晴らしに他人を叩いて留飲を下げる。自分の立場が上だと思ったら、下だと思う他人を、情け容赦なくイジメる。その結果、ドンドン不幸の連鎖が拡大する。解決の方法は、格差の解消しかないのです。