第十四話
 店先に立っていると、見も知らない方から、「元町商店街も変わりましたね」と声を掛けられることがあります。確かに、良くも悪くも変わりました。

なぜ変わるのか
 私は呉服屋になって50年近くになりますが、50年前と今と、同じ呉服屋でも商売の中身はまるで変わりました。商売のやり方が変わったのは、世の中が変わったからです。世の中が変わったのは、お客様の考え方が変わったからです。どう変わったのか。何を大事にするかが変わったのです。生きていくこととは、絶えず選択することです。目の前にある道の、どの道を進むのか、はたまた後戻りするのかを選ばなければならないのです。どうやって選ぶのか。自分にとって、何が大事かを考えて選ぶのです。
 大事なものは何か。十人十色、人生色々、大事なものも人によって、時と所によって色々でしょう。思いつくままに列挙すると、「お金」「楽しみ」「安らぎ」「癒し」「気晴らし」「お洒落」「家族」「友情」「国家」「生活」「健康」「趣味」「仕事」「出世」「奉仕」「信仰」「自己顕示」「自己満足」「優越感」「探究心」「達成感」「克己心」、書き出したら切が無いのでこの辺で止めておきますが、実に色々です。実に色々ですが、人は大事なものを得るために、失わないために、生き方を選ぶのです。
 人にとって大事なものを、「価値」というコトバで置き換えてみましょう。人は誰でも、その人なりの「価値基準」を持っていて、その「価値基準」に基づいて、絶えず「価値判断」しながら生きています。その「価値観」が、時代によって、環境によって、どんどん変わって行くのです。時代が変わる、世の中が変わるのは「価値観」が変わるからです。