第十二話
 「経済」の話なんて小商人(こあきんど)には縁が無いとお思いでしょう。ところがどっこい、とんでもなく関係があるのです。

経世済民
 「経済」の語源は「経世済民」です。「経世済民」は、中国の古いコトバで、「世を経(ただし)、民を済(すくう)」という意味です。そういう意味で「経済」の本来の意味するところは、「政治」に近いように思えます。統治者の統治の心得です。現在、我々零細小売業者が陥っている苦境は、私の考えでは、本来の意味での経済政策の欠如、欠陥にあるように思えます。
 過日、神戸商工会議所が主催された経済セミナーに参加したところ、講師を務められた経済学の先生が、「日本は、ずっと不況が続いています。不況とは、供給に対して需要が少ない状態で、需要が弱いのは、日本人の実質所得が減り続けているからです」とおっしゃいました。まさに実感です。
 その昔、戦後の高度成長の真っ只中、「一億総中流」というコトバが流行しました。流行したのは、大多数の日本人が、それなりにそう実感できたからです。ところが、「一億総中流」というコトバは、死語になって久しい。そんなコトバがあったっけ。知らない人も一杯いる。知っているのは「格差社会」というコトバです。「格差社会」とは、ごく一部のお金持ちに、その他大勢が、お金が無くなった状態を指すコトバなのです。