アナログの愉しみ |
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手作りの愉しみ |
私の三大趣味、音楽鑑賞、演奏録音、写真撮影は、結局、アナログに行きつきました。デジタルをやってみたこともあったのですが。どうしてデジタルではなくアナログなんだろう、と考えると、どちらが良い、悪いではなく、好きか、嫌いか、だった。 デジタルカメラで写真を撮り始めて、こんなに写真を撮るのが上手かったのか、と思うぐらい綺麗に撮れている。フィルムカメラで撮っていた時は、ピンボケや手ブレで一本のフィルムに数枚もコレはと思える写真が撮れなかったのに。ところがダンダン、これって私が撮っているのではなくカメラが撮っているのだ、と気付いたのです。マニュアルカメラなら、シャッタースピードや露出を選んで、ピントを合わせて、手ブレしないようにシッカリとカメラを構えて、息を止めてシャッターを押す。カシャーン。どんな写真が撮れたかは分からない。現像して焼き付けるまでは。出来上がった写真を見て、やっぱり手ブレしてる、とか、ピンボケだった、とその都度、反省する。アナログは手作りなのです。 |
ジャケットの愉しみ |
生のコンサートには勿論、聴く楽しみがありますが、見る楽しみもあります。ところがスピーカーで聴くことには、見る楽しみはありません。その不足を埋めてくれるのがレコードの場合、ジャケットです。30センチ四方のジャケットが、写真で演奏者の気迫を伝えたり、絵画で作曲された時代の空気を感じさせたり、洒落たデザインで部屋を素敵な空間に変えたりするのです。私がCDをどうしても好きになれなかったのは、CDのジャケットでした。チャッチいプラスチックのケースに入ったチッポケなジャケット。LPレコードとは雲泥の差。もしCDの方が好ましい音だとしてもレコードを選ぶでしょうが、音もレコードが好きだから選択の余地はありませんでした。 |
からくりの愉しみ |
レコードプレーヤーにしろ、オープンテープレコーダーにしろ、再生中の器械を見ているのが好きです。クルクル回っていて、如何にも、レコードやテープが回って音が出ているのが分かる。まるでカラクリを見ているようで。方やデジタルは、ほぼブラックボックスです。なんで音が出るのか素人には全く分からない。 |
使いこなしの愉しみ |
私は文学部の出身で、電気工学の知識は皆無なので、レコードから、どうやって音楽が再生されるかはチンプンカンですが、初めてオーディオコンポーネントを組んでからずっと、レコードから良い音楽を聴きたい一心で、一生懸命レコードを聴いてきました。レコードから良い音を出すためにオーディオ雑誌を読んだりして試行錯誤を繰り返してきましたが、やはり最後は自分の耳をたよりに判断してきました。 オーディオコンポーネントでレコード聴き始めた頃、以前にテレビの音声にノイズが出た場合、コンセントの差し込みを逆にしてみる、という話を読んだような気がして、試しにアンプのコンセントの差し込みを変えてみたら、確かに音が変わった。今ではコンセントの極性は常識ですが、当時はまだあまり指摘されていませんでした。 四畳半の下宿で部屋の電灯を消してレコードを聴いていたら突然、バチィ!というすごい音がして、その瞬間、フォノカートリッジの針先とレコードの間で火花が散った。まるで雷のように放電したのです。レコードの帯電がどれほど恐ろしいかを実感して、以来、レコードの帯電防止対策をあの手この手でやり続けてきたのですが、なかなか完璧に帯電を防止できませんでした。しかしやっとここにきて、ほぼ帯電をゼロにすることが出来るようになりました。 レコードの再生は、色々やればやるだけ音をよくすることが出来ます。しかしCDは何をやっても変わらない。使いこなしようがない。CDプレーヤーを購入して接続したら、それでお仕舞いなのです。使いこなしの愉しみが無いことがCD嫌いの理由の一つです。 |
使い続ける楽しみ |
私のオーでイオ機器の最古参はオープンテープレコーダーのソニーTC5550−2で、かれこれ50年ほど前に購入しました。一時期、故障のために使えなくなったこともありましたが修理していただいて今も現役で活用しています。デノンDH610Sというオープンテープレコーダーもほぼ同時期に購入して、やはり故障して使えなかった時期もありましたが修理していただいて今も使用しています。 私はグレースのフォノカートリッジの大ファンなのですが、ヤフーオークションで出品されているのに気が付いて、この2年ほどの間、次から次に購入しました。グレースは1960年代から1980年代が全盛期で、今回、ヤフーオークションで購入したフォノカートリッジも、ほぼその時代の物なので製造されてから既に50年は経った代物ばかりなのですが、どれも驚くほど良い音で鳴ってくれるのです。 デジタルオーディオ機器は、壊れるとほぼ修理不能で、廃棄物にしかならないですが、アナログオーディオ機器は実に何十年と使い続けることが出来るのです。50年前の製品は、50年前の音がする。30年前の製品は、30年前の音がする。音のタイムカプセルなのです。 |