貧乏
 目下、私の最大の関心事は、日本社会の停滞です。私は、一介の街の呉服屋なので、どのように日本の社会が停滞しているのかを、具体的に、数値でもって明示する能力はないのですが、日々、商売に携わっている生活者としての実感なのです。なぜこれほど商売が厳しくなったのか、理由は、単純に、日本人が貧乏になったからです。どれぐらい日本人が貧乏になったかは経済協力開発機構(OECD)が発表する直近の相対的貧困率が先進国中で最悪であることでもハッキリしています。なぜ日本人がドンドン貧乏になっているのか。それは相対的貧困率が示す状態が、貧富の差の拡大だからです。
 日本人がドンドン貧乏になっている、と聞いて、そんな馬鹿な、と思う人も多いことでしょう、今も日本は繁栄を謳歌しているではないか、と。都会には繁栄の象徴のようなタワーマンションが立ち並び、街には国内外の高級車が走り、高級ブランドの服飾品、宝飾品、時計を身に着ける人が沢山いらっしゃる。株や土地はどんどん値上がりして、貧困なんて、一体、どこの話ですか、と。しかし、しがない街の呉服屋には、全く別の風景が見えるのです。