第八話
 個人的な好みで言うと、私は行列が嫌いです。並んで待たなければ得られないものは、この世に存在しないと考えていますが、どうも世の中、そうではないらしい。

行列のできる店
 個人的な好悪は度外視して、世間には行列のできる店があります。なぜ行列ができるのか。その店が販売している商品が買いたいからです。その商品がどうしても欲しいから、並んで待ってでも「買う」のです。と言うことは、「買い手」に、時間と労力をかけても買いたくさせるのは「売り物」です。「売り物」を「買う」ために、「買い手」は、行列してでも「買う」のです。「売り手」にすれば、こんな有難い商売は無い。「売り物」がドンドン「売れる」のですから。
 私は高校生の時、漢文の授業で「桃李(とうり)もの言わねど 下 自ずから 蹊(けい)を成す」というコトバを教わりました。桃も李(すもも)も、ものを言わないけれど(当たり前ですが)、桃や李の花や実を求めて、沢山の人が、桃李の木の下(もと)を訪れるので、自然に道が出来る、という意味です。今の私には、商売の極意に思えます。桃李は店舗、花や実が商品です。