第三十五話
 「商鑑」を書いているのは「私は商売人です」と胸を張って言えるようになりたいからです。

誇りと志
誇りと志 商売について歴史的に考える「商鑑」ですが、お断りするまでもなく、「商鑑」は歴史感想文に過ぎなくて、真贋のほどは、はなはだ怪しく、歴史学のお墨付きを頂けるはずは毛頭ありません。しかし絶えず現実の商売を念頭において書いていることに嘘偽りはありません。
 私は、生きていく上で大切なのは志を持つことだと考えます。志は、生きていることの誇りから生まれると。商売人であることの誇り、神戸元町商店街に店舗を持つことの誇り、その誇りの中から、商売人としての志、神戸元町商店街の商店主であることの志が生まれると。 しかし私自身は、長い間、商売人であることに誇りを持つことが出来ませんでした。だから商売人として志も持てなかった。いつ、どのように、商売人であることに誇りが持てるようになったのか。それは商売人であることで、私が為しうる仕事があることに気付いたからです。商売人である私にしか為しえない仕事があることに。「商鑑」は、私自身が商売を通じて自覚した商業の社会的有用性、必要性を、歴史的に確認する作業なのです。